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essay―HANAゆうきの足跡―
●「びんろうじゅ」の実

びんろうじゅの実 意外なところで「びんろうじゅ」の実を見ました。

数年前、韓国の李朝時代から伝わる古(いにしえ)の女性たちの布=ポジャギに魅せられて、何度となく韓国に足を運んでいた頃のことです。
友人の元さんと一緒にショッピングを兼ねて、仁寺洞(インサドン)をぶらついていると、ふと小さなお店の片隅にアンチィークでもなく、みやげ物用の単純なものでもないとても手の凝った現代作家のポジャギが目に入りました。

店内にはヌビという韓国独特の刺し子のような技法を使った洋服が新しい感覚で作られていました。
その上シルクを草木で染めてオーナーが一点一点仕上げているという事で、とても高価なものばかりです。
どうしても一着は欲しくて日本に帰っても着れるようにと、グレーのヌビのベストを買うことにしました。
元さんはそのあいだもひたすらオーナーとしゃべりつづけ、私の仕事のことやら、ヌビ、ポジャギのこともかなり詳しく情報を聞き出していました。
私のベストの色は、びんろうじゅで染めたとのこと。
それ以来、びんろうじゅの名前はよく耳にするけど、一体どんな物かと気になっていました。

タイに行くようになると、ここではmaakというのが「びんろうじゅ」のことだと意外にすぐ通じました。
ただ生のもの見る機会がありそうでいて、ありません。

ウボンのいなかに住む知人ラットさんの両親の家に、隣近所の人たちとともに招待してもらいました。
日本人が来ているという事で集まってくれるのですね。
この村は、ラオ系の人たちが住んでいるところなので おかあさん、おとうさん、年配の人たちはラオ語で会話をします。
料理はこの家のお母さんが一日がかりで作ってくれました。
もちろんイサーン料理で、もち米を手でいただきました。

土間にカボスのようなものいっぱい転がっているので聞くと、これが「maak=びんろうじゅ」だったのです。
染めたりするためにあるのではなくて、歯みがきがわりに噛むのです。
もう若い人たちはしませんが 年配の女性が口の中を真っ赤に染めているのをラオ系の地域でみかけます。
名前も聞き取れませんでしたが、これと石灰のようなものとを葉っぱにくるんで、一日中噛んでは、ペッ、ペッとはきだすので若い世代は嫌がっているようです。
お母さんがどうしてもというので、ラットさんたちが止めるのを無視してお母さんの指導のもと、口の中に入れてひとかみしました。
一年も経つとあの時の苦しさ、味はもう忘れてしまいましたが、口の中がしびれて、ただただ涙があふれて止まらず困ってしまった事だけは一生涯忘れることはないでしょう。

毎朝四時に起きて、村の入り口を出た道路わきの市場?まで担いで売りに行くそうです。
一個3バーツ(9円位)で売るんだとはりきっていました。
染める為に少し譲ってほしいとはこの時は言えずに帰りました。

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